これは父から聞いた話です。平成元年、北海道の道南にある町でのこと。ある日、父は釣り仲間3人と連れだって、 夕方から近くの海に釣りに行ったそうです。海と隣り合わせにある山の片面が住宅街、海に面した方は岩場です。私も行った事がありますが、絶壁に近い山肌を降りるには、草や枝に掴まらないと落ちてしまいます。しかし魚釣りには穴場でした。そこへ父と釣り仲間3人は、何が釣れるかと楽しみに向かったそうです。岩場の突端着いて、皆、投げ釣りの準備を始めた時、ななめ後ろの方から『すみません』と聞こえて皆振り返ると、そこに小紋の着物を着た中年の女の人が立っていて、うつ向いたまま『この先に行けますか?』と聞いてきたそうです。男性でも足場の悪い岩場の突端に。 父達は、その不自然な状況に無言になり、決して後ろを見ずに広げた釣り道具を急いで片付けて、来た道を帰りましたが 、もう誰も居なかったそうです。
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