「荒神さん」と呼ばれてきた寺
清荒神清澄寺は、平安時代の896年に創建されたと伝わります。宇多天皇の勅願寺として開かれ、本尊は大日如来。あわせて祀られる三宝荒神が、地元で「荒神さん」と親しまれてきた存在です。
荒神は火とかまどを守る神とされ、台所に荒神さんのお札を貼る家庭は今も関西に多く残ります。火事を出さないように、家族が健やかであるようにという、きわめて生活に密着した信仰です。心霊スポットという言葉とは、本来まったく性格が違う場所だといえます。
なぜ「怖い」と検索されるのか
荒神という名前と像容が大きく影響しています。三宝荒神は忿怒の相をとり、複数の顔と腕を持つ姿で表されます。この見た目は、事情を知らずに目にすると強い威圧感を与えます。
また「荒神さんは信心が足りないと厳しい」「粗末に扱うと怒る」といった言い伝えが各地にあり、これが「怖い神様」というイメージにつながりました。ただしこれは祟りの話ではなく、火を扱う場所を大切にせよという戒めが、神の性格として語り継がれたものです。
もうひとつは地形です。境内は宝塚の山裾にあり、参道の先は中山寺へ抜ける山道につながっています。日が落ちると一気に暗くなり、木立に囲まれた石段が続く空間は、それだけで人に緊張感を与えます。
参道は昼に歩くほど面白い
阪急清荒神駅から本堂までの参道には、昔ながらの店が並びます。名物の荒神さんのお供え物や漬物、植木を扱う店が続き、上りきるまで15分ほどの道のりは参拝そのものより印象に残るという人も少なくありません。
境内には鉄斎美術館があり、富岡鉄斎の作品を収蔵しています。心霊スポットを探して訪れるより、この参道と美術館を目的にしたほうが、この場所の本来の姿がよく分かります。
宝塚から西宮にかけて「怖い」と検索される場所
検索データを見ると、清荒神と近い範囲で「怖い」「心霊」と一緒に検索される場所がいくつかあります。西宮市の甲山のふもとにある神呪寺(かんのうじ)、そのすぐ隣の甲山森林公園、そして清荒神の参道の先から尾根づたいにつながる中山寺の裏山です。
三つに共通するのは、いずれも信仰の場か、その信仰の場に隣り合う里山だという点です。甲山森林公園は市民の憩いの場として整備された公園ですが、日が落ちれば照明のない林の中になり、園内で過去に起きた事件が心霊の噂と結びつけて語られてきました。神呪寺も「呪」の字面から誤解されやすい寺で、事情は清荒神とよく似ています。
個々の場所に超常的な理由があるわけではなく、六甲・甲山の山裾に信仰の場と暗い里山が近接して並んでいるという地理そのものが、この一帯に「怖い」検索を集めています。園内で実際に起きた出来事については、亡くなった方と遺族にとって進行形の痛みであり、怪談の題材としては扱いません。
参拝時に守ってほしいこと
清荒神は現役の寺院であり、日々多くの人が真剣に手を合わせに来ます。肝試しを目的とした夜間の立ち入り、境内での騒音、動画撮影を目的とした行為は控えてください。
夜間は閉門します。裏手の山道には照明がなく、猪の出没も報告されています。暗くなってからの入山は現実的な危険を伴います。参道の先から中山寺へ抜ける尾根道は日中でも道がわかりにくく、単独での夜間通行は避けてください。