砂丘に噂が生まれる仕組み
砂丘は、人間の方向感覚を狂わせる地形です。目印になる木も建物もなく、砂の稜線は風で日々形を変えます。歩いてきた足跡さえ、風があれば数分で消えます。
この「戻れなくなる」感覚が、砂丘特有の噂を生んできました。「振り返ったら自分の足跡が消えていた」「誰かに呼ばれて振り向いたが誰もいなかった」。編集部に届く投稿もこの二つに集中しています。実際には風による砂の移動と、遮るもののない空間で音が奇妙に伝わることで説明がつく現象が大半です。
心霊よりも先に警戒すべきこと
砂丘最大の「馬の背」は高さ40メートル以上あり、海側の斜面はかなりの急勾配です。暗闇でここを踏み外せば、砂の上とはいえ無事では済みません。
また砂丘のすぐ先は日本海で、離岸流の発生する海域です。夜間に海側へ迷い込む危険は現実的です。実際に鳥取砂丘では毎年のように救助要請が出ています。夏場は日中の砂の表面温度が非常に高くなり、熱中症のリスクもあります。
肝試しで夜間に入ることは、幽霊よりはるかに具体的な危険に自分を差し出す行為です。
本来の姿を楽しむために
鳥取砂丘は国の天然記念物であり、数万年をかけて中国山地の砂が川と海と風によって運ばれ形づくられた地形です。オアシスと呼ばれる窪地の水たまり、風が刻む風紋、季節ごとに変わる砂の色。日中に歩けば、心霊とはまったく別の圧倒的な景色があります。
砂丘は保全の対象でもあります。落書きやゴミの放置、決められたルート外での車両の乗り入れは避けてください。