溶岩を掘り抜いたトンネル
開聞トンネルは、開聞岳の噴出物が堆積した層を掘り抜いて造られた隧道です。コンクリートによる巻き立てが最小限で、内壁の多くが掘削したままの岩肌を見せています。
幅員は狭く、断面も低い。照明はなく、直線に近い形状であるにもかかわらず、内部は完全な闇になります。この「入口と出口の光の点以外に何も見えない」という体験が、恐怖の中核にあります。
語られてきた噂
トンネル内で白い人影とすれ違った、軍服姿の集団を見た、車のエンジンが止まった——といった話が語られてきました。特に多いのが、軍装の人物に関する目撃談です。
これは地域の歴史と無関係ではありません。南薩摩一帯は、太平洋戦争末期に特攻基地が置かれた地域です。知覧、万世をはじめ、数多くの若者がこの空の下から飛び立ちました。開聞岳は、彼らが最後に見た日本の陸地だったと言われています。この記憶が、トンネルの噂の背景に流れ込んでいると考えるのが自然でしょう。
開聞岳と地域の記憶
標高924mの開聞岳は、円錐形の美しい姿から薩摩富士と呼ばれ、日本百名山にも数えられています。登山道が整備され、山頂からは東シナ海と錦江湾を一望できます。
その一方で、この山が特攻隊員にとって持った意味は、地域で今も語り継がれています。知覧特攻平和会館をはじめとする施設では、当時の記録と遺書が公開されています。開聞トンネルに感じる空気の重さの正体を知りたいなら、これらの場所を訪ねることを強くおすすめします。
通行時の注意
開聞トンネルは現在も地域の道路として使われています。幅員が狭く離合が難しいため、対向車に注意して通行してください。歩行者や自転車も通ります。
トンネル内での停車、写真撮影のための徒歩進入は、後続車にとって極めて危険です。深夜に集まって騒ぐ行為は、近隣にお住まいの方への直接的な迷惑になります。