十五夜・お月見特集

月を指差してはいけない
――お月見でやってはいけない5つの禁忌

稲穂の代わりにすすきを供え、団子を積んで、まんまるい月を見上げる。
やわらかな行事の裏に、月へ向けられた古い畏れが隠れている。

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中秋の名月、ふたたび月を待つ夜

旧暦八月十五日の夜の月を「十五夜」「中秋の名月」と呼びます。2026年(令和8年)の十五夜は9月25日(金)。ひと月遅れの「十三夜」は10月23日です。空気が澄み、稲の実りに感謝する時期にあたるため、一年でもっとも月が美しいとされてきました。

お月見はもともと中国から伝わった観月の風習に、日本の収穫祭と月への信仰が結びついたものです。神事でも仏事でもない民間行事ですが、それだけに土地ごとの言い伝えが濃く残っています。月を指させば指が腐る、片方の月しか見なければ縁起が悪い――やさしい行事の作法の多くは、じつは「やってはいけないこと」の裏返しでした。

十五夜・お月見の5つの禁忌

5つの禁忌――それぞれの由来と理由

禁忌01月を指差す

「月を指差すと指が腐る」「指が曲がる」――日本各地に残る、もっとも有名な月の禁忌です。太陽や月は昔から神々の依り代とされ、神聖なものに向かって指を突きつける行為が無礼にあたるとして戒められてきました。子どもへの脅しの形で言い伝えられるうちに「指が腐る」という具体的な罰の話になったと考えられています。

同じ理由から、月に向かって悪口を言う、唾を吐く、尻を向けることも嫌われました。眺めるのはよいが、粗雑に扱ってはいけない。お月見は「月を見る」行事であると同時に、「月に見られている」という感覚をともなう行事だったのです。

禁忌02片見月(片月見・片月)

十五夜(旧暦八月十五日、里芋を供えるので「芋名月」)を見たなら、ひと月後の十三夜(旧暦九月十三日、「栗名月」「豆名月」)も必ず見る。どちらか一方しか見ないことを「片見月」と呼び、縁起が悪い、災いを招くとして避けられてきました。しかも、できれば同じ場所・同じ顔ぶれで見るのがよいとされます。

この風習は江戸の遊里で客を二度呼ぶための口実として広まったという説もありますが、収穫を二度にわたって月に感謝するという素朴な信仰が下地にあります。2026年は十五夜が9月25日、十三夜が10月23日。片方だけで済ませないよう、いまのうちに10月の予定にも印をつけておいてください。

禁忌03お供えのすすき・団子を粗末に扱う

お月見のすすきは、本来供えるべき稲穂の代わりです。十五夜の頃はまだ稲刈り前のため、姿の似たすすきを依り代として立てました。すすきの切り口は鋭く、魔を祓う力があるとも信じられ、月見のあとに軒先へ挿しておくと一年間病気をしない、という土地もあります。踏みつけたり、そのままゴミに出したりするのは避け、塩をふって清めてから処分します。

月見団子のほうは扱いが逆で、下げて食べてよいものです。地域によっては、子どもが供物の団子を盗んで食べるのを「月からの使いが受け取ってくれた」と喜ぶ「月見どろぼう」の風習も残っています。ただし供えっぱなしで腐らせるのは、感謝を形にした供物を無にする行為として嫌われました。

禁忌04月光の下で長く眠る

「満月の光を浴びて寝ると顔が変わる」「月に魂を抜かれる」。月光を長く浴びることを嫌う言い伝えは、洋の東西を問わず広く見られます。英語で狂気を意味する lunatic は、月(luna)に由来する言葉です。満月の夜には事件や凶行が増えるという俗信も、根強く語られてきました。

実際には、夜露の当たる屋外で長時間過ごせば体は冷え、体調を崩します。名月に見とれて夜更かしをした翌日に熱を出す――そうした経験の積み重ねが、「月に見られると障る」という戒めの言葉に結晶したのでしょう。縁側での月見は、ほどほどの時間で切り上げるのが作法です。

禁忌05水面や鏡に映った月を指す・またぐ

盆の水や池の面に映る月は「二つ目の月」と呼ばれ、空の月とは別のもの、異界へ通じる入口と見なす感覚がありました。水鏡の月を指さす、踏む、またぐといった行為は、空の月を粗末に扱うのと同じか、それ以上に強く忌まれます。

これは夜の水辺に近づくこと自体への戒めでもあります。月を映そうと暗がりで水面をのぞき込めば、足を滑らせる危険がある。「水に映る月には手を出すな」という言い伝えは、怪異の警告であると同時に、実際的な事故防止の知恵でもありました。

月にまつわる都市伝説と俗信

絶対にやってはいけないこと

月夜と心霊現象

編集部より

本記事で紹介した禁忌の多くは、事故防止の知恵と、口伝えに残る民間伝承が入り混じったものです。「指が腐る」「顔が変わる」といった罰は迷信ですが、その裏には、神聖なものを敬い、夜の暗がりや水辺には不用意に近づかない、という先人の生活感覚が息づいています。

心霊的な言い伝えを信じるかどうかは読者の皆様の判断にお任せします。ただ、月がいちばん美しいこの時期に、少しだけ空を見上げる時間を持つ――それだけでも、昔の人が月に向けた気持ちの一端に触れられるはずです。

今年の十五夜は9月25日。あなたはどこで、誰と、その月を見上げますか。

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