中山道最大の難所
中山道は江戸と京を結ぶ街道のひとつですが、山中を通るため冬季の通行が困難な区間が複数ありました。なかでも和田峠は最大の難所とされます。
和田宿から下諏訪宿までの距離は中山道で最長で、その間に標高1600メートル級の峠を越えなければなりません。冬に吹雪へ遭えば、宿にたどり着けずに命を落とすことになります。
この状況を受けて、峠には旅人を保護するための施行所が設けられました。永代にわたって旅人へ粥や焚き火を提供する施設で、実際に多くの命を救ったと伝えられます。裏を返せば、それだけの犠牲があったということでもあります。
峠に噂が生まれる理由
和田峠が心霊スポットとして語られる背景には、この行き倒れの歴史があります。峠道沿いには供養のための石仏や碑が点在し、それらが噂の起点になってきました。
また現在の峠道も、霧が発生しやすく、夜間は街灯がありません。長野の山間部は気温の低下も急で、季節によっては路面凍結もあります。夜にここを走った人が不安を覚えるのは自然なことです。
ただし峠に残る石仏は、亡くなった旅人を悼むために置かれたものです。これを恐怖の対象として扱うのは、置いた人々の意図とは正反対でしょう。
黒曜石の峠
あまり知られていませんが、和田峠一帯は国内有数の黒曜石の産地です。旧石器時代からここで採取された黒曜石は、石器の材料として広範囲に運ばれ、交易の証拠として各地の遺跡から出土しています。
つまりこの峠は、江戸時代の街道より遥かに古い時代から人が越えてきた道でもあります。
現在は国道と旧道が並行しています。旧道区間は路面状況が悪く、冬季は閉鎖されることがあります。訪問前に通行状況を確認してください。