1590年6月23日に起きたこと
八王子城は、小田原北条氏の一族・北条氏照が築いた大規模な山城です。1590年(天正18年)の豊臣秀吉による小田原征伐の際、前田利家・上杉景勝らの軍勢に攻められ、わずか一日で落城しました。
城主の氏照は小田原本城に詰めており不在。城には家臣の家族や近隣の領民が籠っていました。落城時、逃れられなかった女性や子どもを含む多数が命を落としたと記録されています。この一日の犠牲の記憶が、四百年を経てなお、この山に語り継がれる話の源になっています。
御主殿の滝の伝承
城跡で最も多く語られるのが、御主殿跡のそばにある小さな滝です。落城の際、この滝で自刃した人々の血によって城山川の水が三日三晩赤く染まった——という伝承が残されています。
現在の御主殿の滝は、想像するよりずっと小規模なものです。それでも訪れた人の多くが、この場所だけ空気が違うと口にします。滝壺の前には手向けられた花や供物が絶えることがありません。
語られてきた噂
御主殿跡の石垣付近で人の声を聞いた、曳橋の上で肩を掴まれた、山道で武者の姿を見た、といった話が繰り返し語られてきました。八王子城跡は都内の心霊スポットとしては最も投稿の多い場所のひとつです。
一方で、この山は深沢山の中腹にあり、木々に囲まれた谷筋の地形が音を独特に反響させます。日没後は急速に暗くなり、獣も多く生息しています。噂と自然条件のどちらがどこまでを説明するかは、断定できるものではありません。
史跡として訪れてほしい場所
八王子城跡は現在、ガイダンス施設が整備され、復元された曳橋や石垣、御主殿跡を見学できます。本丸跡までは登山道を40分ほど登る必要がありますが、関東の山城として屈指の遺構が残されています。
見学は日中のみです。駐車場は夜間閉鎖され、夜間の入山はできません。ここは戦で命を落とした人々が眠る場所であり、慰霊のために訪れる方も多い史跡です。肝試しを目的とした夜間の侵入は、迷惑行為である以前に、この場所に対する敬意を欠く行いです。