山伏が暮らした山
英彦山は古くから修験道の中心地のひとつでした。最盛期には山中に数百の坊が置かれ、多数の山伏が修行と生活を営んでいたと伝えられます。参道沿いに続く石垣は、その坊の跡です。
明治期の神仏分離と修験道の廃止により、この体制は解体されました。坊は失われ、山伏は山を下ります。残されたのは石垣と石段、そして苔むした礎石だけでした。今も参道を歩けば、人が消えた集落の跡をそのまま歩いていることになります。
なぜ怪異が語られるのか
英彦山が心霊スポットの文脈で語られるのは、この「人がいた痕跡が大量に残る山」という性格によるものでしょう。ただの自然林であれば、人は畏れこそすれ怪異は想像しません。しかしそこに石垣と階段があり、かつて誰かが住んでいたと分かると、話の質が変わります。
加えて英彦山は霧が発生しやすく、標高も高いため天候が急変します。深い杉木立の参道は昼でも薄暗く、音が吸われて奇妙に静かです。編集部に届く投稿でも「誰かに見られている感じがした」という表現が繰り返し現れます。
ただし山伏の修行の場であったこの山は、本来は畏れと祈りの対象であって、恐怖の対象ではありません。
登る際に
英彦山神宮の奉幣殿までは参道の石段またはスロープカーで上がれますが、山頂の上宮へはさらに本格的な登山になります。岩場や鎖場があり、装備なしで臨む道ではありません。
天候の急変が多い山です。霧が出れば道標を見失いやすく、実際に道迷いも起きています。日没時刻を把握し、余裕をもった行程を組んでください。
山中の坊跡は貴重な遺構です。石垣を崩す、礎石を動かすといった行為は絶対に避けてください。