青の洞門を掘った僧
競秀峰の断崖には、かつて鎖にすがって通る険しい道しかなく、多くの通行人が転落して命を落としていたと伝えられます。これを見た禅海和尚が、岩を掘り抜いて安全な道を作ろうと決意し、鑿と槌だけで掘り進めました。
着手から貫通まで、およそ30年を要したといいます。完成後は通行料を取ったとも伝えられ、これは日本最初期の有料道路のひとつとも言われます。
この話は菊池寛の小説『恩讐の彼方に』の題材となり、広く知られるようになりました。小説では敵討ちの物語として脚色されていますが、洞門の手掘りの跡は現在も現地に残っています。
奇岩が生む景観と噂
耶馬渓の奇岩は、火山岩が長い年月をかけて浸食されてできたものです。柱状の岩が林立する光景は日本離れしており、一目八景の展望台からは複数の奇峰を一度に望めます。
心霊スポットとして名前が挙がるのは、主に人の手で掘られた隧道群のためでしょう。青の洞門をはじめ、この地域には古い手掘りのトンネルが複数あり、内部は狭く暗く、壁面には鑿の跡が生々しく残っています。
ただしそれらは、人が人のために掘った道です。ここで語られるべきは怪談ではなく、通行人の死をなくそうとした人々の営みでしょう。
訪れる際に
青の洞門は現在も通行できますが、車道部分と歩行者用の手掘り区間が分かれています。手掘り区間は天井が低く足元も平坦ではないため、頭上と足元に注意してください。
紅葉期は交通量が大幅に増えます。路上駐車は渋滞と事故のもとになるため、指定の駐車場を利用してください。
奇岩を近くで見ようと柵の外へ出る行為は、そのまま滑落につながります。展望台から眺めてください。