結論:怖さは、森の性質より後から重なった物語から来ている
青木ヶ原は、864年の貞観大噴火で流れ出た溶岩が、当時あった広大な湖「剗の海」の大半を埋めた場所に生まれた森です。約1200年という歴史は、森としては若い部類に入ります。
溶岩の上に育った森なので土が薄く、木々は根を地表に広げて育ちます。昼でも暗く感じられ、風の音も吸い込まれるように静かになります。この環境が、訪れた人に強い印象を残してきたことは確かです。
「樹海」という名前と、名所化の経緯
山頂から眺めると、木々が風になびく様子が海原のうねりのように見えることから「樹海」と呼ばれるようになった、という説があります。
また、この森が「その種の名所」として広く知られるようになった背景に、松本清張の小説『波の塔』が取り上げられたことがあると、一般に言われています。つまり、現在のイメージの一部は文学作品とその後の報道で形づくられたものです。
編集部は、この森を興味本位で取り上げる記事を書くつもりはありません。ここでは、噂の仕組みを整理することにとどめます。
「磁石が狂う」は本当か
よく語られる「方位磁針が使えない」という話は、俗説です。溶岩地帯のため地中に磁鉄鉱が多く、方位磁針に1〜2度程度の乱れが出ることはありますが、方角が分からなくなるほど大きく狂うものではありません。
時計や車の計器、放送機器に異常が出るといった話にも、科学的な根拠は確認されていません。ただし、目印の少ない樹林では、方位磁針が正常でも道に迷いやすいのは事実です。
訪れる前に知っておくこと
青木ヶ原は国立公園の特別保護地区であり、国の天然記念物です。遊歩道の外へ出る行為は、迷う危険があるだけでなく、貴重な自然を傷めます。
夜間の立ち入り、遊歩道を外れる肝試しは絶対に避けてください。もし、つらい気持ちを抱えている方がこのページを読んでいるなら、一人で抱え込まず、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料)などの相談窓口に連絡してください。
森林の景観を楽しむなら、整備された遊歩道とガイド付きの探索ツアーが安全です。同じ富士山麓の人穴など、周辺の信仰の場もあわせて知ると、この一帯が古くから信仰の対象だったことが見えてきます。