地名の由来となった伝説
言い伝えでは、平安末期に平泉寺にいた東尋坊という僧が、その乱暴な振る舞いから恨みを買い、宴に誘い出されてこの断崖から突き落とされたとされます。以来、命日にあたる時期になると海が荒れると語られてきました。
この伝説は江戸期の地誌にも記述が見られ、地元では長く語り継がれてきたものです。心霊スポットという言葉が生まれるはるか以前から、この岩場は「人が落とされた場所」として認識されていたことになります。
柱状節理という地形
東尋坊の岩壁は、マグマが冷えて固まる際に生じる規則的な割れ目(柱状節理)が海に削られて露出したものです。同規模のものは世界に3カ所しかないとされ、地質学的にきわめて貴重な地形です。
五角形・六角形の柱が垂直に立ち並ぶ光景は、人工物のような整い方をしています。この「自然とは思えない規則性」が、見る者に非日常的な印象を与えることも、この場所の雰囲気を形づくっている要素でしょう。
語られてきた噂
断崖の縁で背中を押されるような感覚があった、岩場から名前を呼ばれた、といった話が繰り返し語られてきました。夜間の駐車場や遊歩道での目撃談も少なくありません。
ただし東尋坊は日本海に突き出した岬であり、冬季を中心に極めて強い風が吹き上げます。断崖の縁に立てば、実際に体を押される力を受けます。波が岩の隙間に打ち込む音も、条件によっては声に似た響きを持ちます。
訪れる方へ
東尋坊には転落防止の柵がほとんどありません。これは景観保全のためですが、同時に一歩の踏み外しが致命的になる場所だということです。岩場は濡れると非常に滑ります。
また東尋坊では現在も、思い詰めた人に声をかける地元の見守り活動が続けられています。この場所を面白半分に扱うことが、その活動を支える方々の努力を軽んじることにつながらないよう、節度を持って訪れてください。日中の景観は、それだけで訪れる価値のあるものです。