「日本三大心霊スポット」に公式な選定はない
日本三名園、日本三大がっかり名所——「日本三大○○」という言い回しは数多くありますが、公的機関が審査して決めているものはほとんどありません。心霊スポットも同様です。観光協会や学術団体が「これが三大心霊スポットです」と発表した記録は、編集部が確認した限り存在しません。
にもかかわらず「日本三大心霊スポット」という言葉自体は古くから使われ、検索され続けています。これは、その言葉が「特に有名な場所を手早く知りたい」という需要にぴったり合う便利な形だからだと編集部は考えています。中身が固定されていなくても、言葉の器としては機能してしまうのです。
媒体をまたいで常連になる場所
サイトや書籍によって挙げる場所は違いますが、複数の媒体で重複して名前が挙がる場所はあります。福岡県の犬鳴峠(旧犬鳴トンネル)、山梨県の青木ヶ原樹海は、特に多くの一覧で常連です。次いで沖縄県の中城高原ホテル跡、山梨県の花魁淵、富山県の坪野鉱泉あたりが挙げられることが多いという印象です。
これらに共通するのは、単発の噂ではなく、雑誌やテレビの心霊特集で繰り返し取り上げられてきた蓄積があることです。「三大」を名乗る記事の多くは、実は独自取材ではなく、こうした先行メディアで既に有名だった場所を再編集して作られています。
常連になる三つの条件
編集部が各地の記事を比較して見えてきたのは、常連入りする場所にはおおむね三つの条件がそろっているということです。ひとつは、実在の事件・事故という裏付けがあること。犬鳴峠には実際の重大事件が、坪野鉱泉には1996年の失踪事件があります。噂だけで終わらず、報道された事実があることが、他の場所と差をつけます。
ふたつめは、全国メディアでの反復紹介です。一度どこかの番組や雑誌で取り上げられると、後続の記事がそれを引用し、露出が雪だるま式に増えます。三つめが、現在は立入不可・閉鎖済みという現況です。犬鳴の旧トンネルはコンクリートで封鎖、中城高原ホテルは解体済み——「もう見に行けない」という事実が、噂を固定化させ、色褪せにくくします。
顔ぶれが入れ替わる理由
「三大」を名乗りながら中身が記事ごとに違うのは、選定基準がそれぞれの筆者の主観だからです。恐怖の強さを基準にする記事もあれば、知名度を基準にする記事、アクセスのしやすさで選ぶ記事もあります。基準が違えば、当然選ばれる場所も変わります。
また、時代によっても顔ぶれは動きます。ある場所が解体・立入禁止になって話題が薄れると、代わりに別の場所がメディアに取り上げられて台頭する——というように、常に固定された三カ所があるわけではなく、緩やかに入れ替わりながら「三大」という言葉だけが引き継がれているのが実態です。
「三大」と恐怖度ランキングはどう違うのか
当サイトでは、独自の基準で全国の心霊スポットに恐怖度ランキングをつけています。噂の広がり、背景にある事故・事件の重さ、現地の立地が生む圧迫感、全国的な知名度の4点を編集部が総合したもので、あくまで心霊.JAPAN独自の指標です。
一方「日本三大心霊スポット」は、特定サイトの順位付けではなく、複数の媒体をまたいで長年語り継がれてきた俗称の集合です。どちらが正しいというものではなく、性質の違う二つの「まとめ方」だと捉えるのが実態に近いでしょう。
「三大」に数えられた場所は今どうなっているか
常連として名前が挙がる場所の多くは、すでに立入ができない状態にあります。旧犬鳴トンネルは坑口がコンクリートで完全封鎖され、内部への進入はできません。坪野鉱泉は建物自体がすでに解体され、現地に当時の姿は残っていません。中城高原ホテル跡も解体が進み、往時の姿とは大きく変わっています。
「三大」と呼ばれるほど有名になった場所ほど、訪問者が集中して安全管理上の問題が生じやすく、結果として封鎖や解体が進みやすいという傾向も見えます。噂を確かめたいという気持ちより先に、現地がすでに「見に行けない場所」になっているケースが多いことは知っておいて損はありません。